「水素水の健康効果って本当にあるの?科学的な根拠はどうなっているのか詳しく知りたい!」
水素水の健康効果については、様々な情報が飛び交っており、その真偽について疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
実際、一部では「奇跡の水」とまで言われる一方で、科学的根拠に疑問を呈する専門家の声も少なくありません。
・水素水の健康効果は科学的に証明されているの? ・水素水にはどんな種類があるの? ・水素水を選ぶ際の注意点を知りたい!
など、水素水の健康効果について知りたいこともあるでしょう。
そこで今回は、『水素水の健康効果に関する科学的根拠』を中心に、『水素水の種類や選び方の注意点』についてお話ししていきます。
水素水とは?基本的な仕組みを理解しよう
水素水とは、水素分子の濃度を高めた水の総称のことです。
しかし、水素水には公的な定義や水素の含有量に関する明確な基準が存在していません。そのため、メーカーによって水素の濃度や製法が大きく異なっているのが現状です。
また、水素水は大きく分けて2つの種類に分類されます。まず、水素ラジカルや水素化物イオンが溶存しているとされる「活性水素水」。そして、水素分子(H2)を溶かし込んだ「水素分子水」があります。
このうち、活性水素水については科学的根拠が乏しく、過去に公正取引委員会から景品表示法による排除命令が出された経緯があります。そのため、現在議論されている水素水は主に水素分子水を指しているケースが多いでしょう。
水素分子は非常に小さな分子で、理論的には細胞膜を通過して体内の隅々まで到達する可能性があります。この特性が、水素水の健康効果に期待を寄せる理由の一つとなっているのです。
水素水の健康効果に関する科学的根拠
水素水の健康効果について、現在の科学的研究状況をお伝えしていきます。
動物実験レベルでの研究結果
水素水に関する研究は、主に動物実験レベルで行われています。
マウスを使った実験では、水素水が脳内の活性酸素量を減少させることが報告されました。また、同じ実験において、強いストレス下にあるマウスの脳内海馬で変性した細胞が水素水によって減少したことも観察されています。
これらの研究は、水素分子が活性酸素と結合して無害化するという理論に基づいています。活性酸素は体内でエネルギーを生成する際に作られる反応性の高い酸素分子で、適量であれば免疫機能として働きますが、過剰になると細胞にダメージを与える可能性があるとされているからです。
ただし、これらは動物実験での結果であり、人間での効果については別途検証が必要になってきます。
ヒトでの研究における現状
一方、ヒトを対象とした研究については限定的な状況となっています。
国立健康栄養研究所は、「現時点における水素水のヒトにおける有効性や安全性の検討は、ほとんどが疾病を有する患者を対象に実施された予備的研究であり、それらの研究結果は、健康な人が市販の多様な水素水の製品を摂取した時の有効性を示す根拠になるとはいえない」と評価しています。
つまり、現時点では健康な人が日常的に水素水を摂取することの健康効果について、十分な科学的根拠は確立されていないということになります。
また、2021年には慶應義塾大学医学部から「水素に自律神経のバランスを整え、血圧を下げる効果」を示唆する研究結果がプレスリリースされていますが、これも基礎研究段階の報告となっています。
薬機法で認められている効果
現在、薬機法(医薬品医療機器等法)で効果が認められているのは、電気分解方式で生成したアルカリ性電解水のみです。
効果については「胃腸症状改善」に限定されており、美容や老化防止といった効果は認められていません。これは管理医療機器として承認を受けたアルカリイオン整水器で作られた水に限定されています。
そのため、市販されている多くの水素水製品については、現時点で公的に認められた健康効果はないということが実情です。
水素水をめぐる規制状況と注意点
水素水業界では、過去に様々な規制当局からの指摘を受けた事例があります。
過去の措置命令と書類送検事例
2021年3月には、消費者庁が水素水生成器の販売・レンタルサービス事業者4社に対して、景品表示法違反として措置命令を行いました。
これらの事業者は、生成された水素水を摂取することにより活性酸素の除去効果や老化防止効果、炎症やアレルギー症状の抑制効果等が得られるような表示をしていましたが、消費者庁が資料の提出を求めたところ、合理的根拠が認められなかったとされています。
さらに深刻なケースとして、2017年にはスーパーのジャパンミートが、承認を受けていない水素水を「ガンや動脈硬化に効く」「悪玉活性酸素を排出」などと医薬品のように広告して販売したとして、薬機法違反で書類送検された事例もあります。
国民生活センターの調査結果
国民生活センターには、水素水に関する相談が多く寄せられており、2015年から2016年にかけて市販の水素水製品について調査を実施しました。
この調査では、水素の濃度が商品によって大きく異なることや、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品として許可・届出されたものはないことが明らかになっています。
また、一部の製品では表示された水素濃度よりも実際の測定値が低いケースも確認されており、品質管理の面でも課題があることが指摘されています。
水素水の選び方と注意すべきポイント
水素水に興味がある方は、以下のポイントに注意して選択することが大切です。
科学的根拠の確認
まず、水素水の健康効果について過度な期待を持たないことが重要になってきます。
現時点では、健康な人が市販の水素水製品を摂取した時の有効性を示す根拠は十分ではないというのが専門機関の見解です。
そのため、水素水を「健康に良い」「病気に効く」といった表示で選ぶのではなく、あくまで水分補給の一つの選択肢として考えることをおすすめします。
製品の表示内容をチェック
水素水を購入する際は、製品の表示内容を詳しくチェックしてみてください。
特に、水素濃度が明記されているか、生成方法が説明されているか、過度な効果効能を謳っていないかなどを確認することが大切です。また、薬機法や景品表示法に違反するような表示がある製品は避けた方が無難でしょう。
さらに、アルカリイオン水であっても、効果が認められているのは胃腸症状の改善のみですので、美容や老化防止などの効果を期待して購入することは控えることをおすすめします。
水素の保存性に注意
水素は非常に小さな分子のため、容器から逃げやすい性質があります。
水素水をコップについで3時間くらい経つと水素は抜け出て半分になってしまうとされています。そのため、水素水を購入する場合は、開封後はなるべく早めに飲むことが重要です。
また、アルミパウチやアルミ缶など、水素が逃げにくい容器を使用している製品を選ぶことも一つのポイントになります。
水素水に関する今後の研究展望
水素水の健康効果については、今後さらなる研究が期待されています。
水素吸入療法の進展
水素水とは異なりますが、水素ガスを直接吸入する治療法についても研究が進められています。
2016年11月に先進医療Bとして進められていた水素治療の結果が2023年3月にプレスリリースされ、非常に有意な効果がみられたとの報告があります。
これは水素水ではなく、高濃度の水素ガスを直接吸引する方法であり、心肺停止後の脳のダメージを抑制する効果について検証されています。このような研究の進展により、水素の医療応用についてさらなる知見が得られる可能性があります。
基礎研究の蓄積
動物実験レベルでは、水素の抗酸化作用や抗炎症作用に関する研究が継続的に行われています。
これらの基礎研究の蓄積により、将来的にはヒトでの有効性についてもより明確な答えが得られる可能性があるでしょう。ただし、動物実験の結果がそのまま人間に当てはまるとは限らないため、慎重な検証が必要になってきます。
まとめ
水素水の健康効果については、現時点では十分な科学的根拠が確立されていないというのが実情です。
動物実験レベルでは一定の効果が報告されているものの、健康な人が日常的に摂取することの有効性については明確な証拠がありません。また、薬機法で認められているのは電気分解方式のアルカリ性電解水による胃腸症状改善効果のみとなっています。
水素水に興味がある方は、過度な健康効果を期待するのではなく、水分補給の一つの選択肢として捉えることが大切です。そして、製品を選ぶ際は表示内容をしっかりと確認し、科学的根拠に基づかない誇大な効果効能を謳っている製品は避けるようにしてみてください。
何より重要なのは、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠といった基本的な生活習慣を整えることです。水素水はあくまで補助的な位置づけとして考え、健康的なライフスタイルの基盤をしっかりと築いていくことをおすすめします!
コメント